會津八一記念館は7月14日、會津八一記念館で開催中の「芝蘭の交わり~八一と麻青の書画」を記念して文芸講演会「北方の人會津八一 麻青あて書簡をよむ」を開きました(会場:新潟市中央区万代の日報ホール)。講師の和泉久子先生(鶴見大学名誉教授)が、麻青宛て手紙の中の八一の作品などをもとに、新潟に根差した文学活動を展開した二人について語り、約80人が耳を傾けました。

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和泉先生は文学と風土の関係について「人間存在の基盤になるものであり、人間の特性を形作るもの」と定義し、「地方の心が培われて、それを新潟の風景を表すのは人間として当然のこと。越後の風土から感じたもの、風土それ自体を詠みこむということ」だとして上で、八一の《青貝のふばこの文や夜半の月》や《門をゆくひと物いわぬ深雪かな》を例に挙げました。麻青も《荒海のうろくづはみて吹き狂ふ吹雪に育つ北つ人かも》と新潟の風景を詠んでいます。 

「芝蘭の交わり~八一と麻青の書画」展では、八一と麻青が期せずして同じ言葉を揮毫したその作品も見どころの一つです。《同心之言其臭如蘭》です。これは「心の合った者の交わす言葉は蘭のようにかぐわしい」という意味です。このことについて和泉先生は「二人に通じた心があったのではないか。学問芸術は大切にしなければならない。この大枠で確認した。人間の尊厳を確立するものだという考えを持っていた」との解釈を示し、「《同心之言其臭如蘭》の中の「同心」とは審美眼、美への感覚、美的判断。同じ審美眼を共有することではないか」と、心を通わせた二人の関係について述べました。

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