2012年5月 5日
自然の美
風薫る5月となりました。周りの景色が美しく映え、心が和みますね。
現在開催中の會津八一と入江泰吉展も、奈良・大和路の風光の美を写し出した写真を展示しています。たとえば、満開の八重桜を手前に、バックにはほんのりと浮ぶ東大寺大仏殿を写した「陽春大仏殿」や、澄み切った秋の青空を背景に、天女たちが舞っている「薬師寺東塔水煙」など、対象と自然とが一つの風景として渾然と溶け込んでいます。中でも印象的なのは、「二上山晩照」(画像)です。当麻寺近くにある二上山は、古代から神の山として崇拝されていました。その二上山の雄岳の頂上には、飛鳥時代、王位継承問題で死罪を受けた悲劇の皇子、大津皇子が葬られているのです。入江は、その怨念こもる二上山を表そうと、十数回足を運んだのち、暗雲立ち込める夕焼けの二上山をシャッターチャンスとして捉えたのでした。
大和路の美について、入江は次のように述べています。「大和路は仏教を中心にした、それらの文化遺産の数々が千年の風雪にいぶされ、美しく豊かな自然のうちに溶け込む風物一体をなしている。その景観の陰に古代史が、更にはその時代に生きた人々の息吹が宿されていて、この地ならではの美しくもしみじみと心に沁み入る情緒がかもされている」。
こうした、大和路の自然の美を映し出すきっかけとなったのは、実は會津八一との出会いからでした。八一は「歌を詠むので書を書かなければならない。書は木や草に文字の根源があるので、自然を手本として求めた」と。入江は、大和路の自然をよく観察することの重要性を八一の話から学んだそうです。会場には、入江が八一から贈られた書『道法自然』も展示しています。入江の座右の銘となった八一の墨跡とともに、詩情あふれる入江写真をぜひご堪能ください。
(学芸員・喜嶋)

2012年4月30日
講演会のお知らせ
ゴールデンウィーク真っ只中。いかがお過ごしでしょうか。
4月14日は、奈良県立図書情報館館長で、国際日本文化研究センター名誉教授の千田稔先生をお招きして文芸講演会を開催しました。「古代の風景へ 會津八一が憧れた奈良」と題して、會津八一の奈良歌や、法隆寺再建非再建論争から邪馬台国論争まで、幅広い内容で奈良の歴史と魅力をお話しいただきました。聴講者がホールに満杯になるほどの大盛況、ご参加いただきありがとうございました。
さて、今回の企画展「會津八一と入江泰吉」は、もう一つ講演会を予定しています。入江泰吉が生涯に撮影したフィルム約7万点を所蔵し、今年開館20周年を迎えた入江泰吉記念奈良市写真美術館の学芸員、説田晃大先生をお招きして、入江泰吉と奈良大和路の魅力をたっぷりとお話ししていただきます。応募方法は往復はがきで記念館まで、たくさんのご応募お待ちしております。
講師 入江泰吉記念奈良市写真美術館学芸員
説田晃大先生
演題 「入江泰吉が写した奈良大和路 その魅力に迫る」
会場 クロスパルにいがた 4F映像ホール
日時 5月25日(金)
時間 午後6時から午後7時半(予定)
入場料 無料
申し込み締め切り 5月18日(金)
※申し込みは往復はがきで記念館まで
2012年4月 6日
春の企画展が始まりました!!
新潟市内はまだ薄ら寒い日が続き、記念館敷地内にある梅も桜もつぼみのままですが、4月1日から企画展「奈良県・新潟市 歴史文化交流協定締結記念 入江泰吉没後二十年 會津八一と入江泰吉」を開催しています。
戦後、1992年(平成4)1月16日、86歳で没するまで、約半世紀にわたって奈良大和路の風景や仏像を撮り続けた入江泰吉。今回は會津八一が愛した日本の原風景・奈良大和路を、入江の写真作品と共にご紹介いたします。
以前のブログでもご紹介しましたが、新潟市と奈良県の間では、本年2月に歴史・文化交流協定が締結されました。この締結は、會津八一の奈良での足跡を通して、これまで交流を深めてきたことを認め、今後更なる交流拡大の決意を示したものでしょう。本展覧会は協定締結を記念した最初の展覧会になります。他方、入江泰吉記念奈良市写真美術館は本年、開館20年を迎え、その記念にもなる展覧会となります。
(学芸員・湯浅)
※今回の展覧会は、途中一部展示替えがあります。前期4月1日から5月13日までは入江泰吉のモノクローム写真を、後期5月15日から6月24日まではカラー写真を中心に展示致します。前期の入場券の半券をお持ちいただくと、後期は無料で入場できます。
2012年3月25日
銀閣寺の名庭師・田中泰阿弥
少し前ですが、3月初旬、京都へ出張の合間に銀閣寺へ見学してきました。銀閣寺というと、観音殿(銀閣)などの建物ばかりが注目されますが、庭園も趣があります。この庭園には、なんと新潟出身の人物が深く関わったのです。その名は、田中泰阿弥(たなか・たいあみ=本名泰治 1898~1978)、柏崎市出身の庭師です。室町時代の8代将軍足利義政の時に造られ、その後400年の間に土砂崩れで埋没した「洗月泉石組」=画像=を1929年に泰阿弥が発掘。さらに、31年には、東求堂の丘から足利義政愛用のお茶井戸なる石組も発掘し、2つの石組を復元したのです。泰阿弥が銀閣寺での成果を実兄に宛てた書簡を最近読んだのですが、「大庭園が忽然として世に顕れ世界に比類なき我国造園史上に一層意義あらしむる事となる事は誠に悦しい事であります」と感激した言葉が綴られていました。
銀閣寺での仕事が一躍世間に知られ、京都・相国寺の庭や全国各地での造園作業に関わるようになり、庭の世界では今も「庭匠」としてあがめられている泰阿弥。戦後、會津八一とも知り合うようになります。新潟市江南区の北方文化博物館の伊藤邸に出入りしていたころでした。1955年、八一終焉の地・同市南浜通の北方文化博物館分館に「かすみたつ はまのまさごを ふみさくみ かゆきかくゆき おもひぞわがする」の歌碑が建立される時、実は泰阿弥が深く関わっていたのです。石工を紹介したり、歌碑の相談を受けたりするなど、八一と親しく交流しました。短歌も詠じる風流人泰阿弥。八一歌碑が建つ喜びは感慨もひとしおで、日記には、当時の心情が次の一首に込められていました。
霞たつ 春をやまたむ 南浜に 秋艸道人の 歌碑たつおもひは 泰阿弥
なお、泰阿弥が手掛けた庭園は県内においても、高柳町の貞観園、与板の豊耀園(植木邸)、新潟市秋葉区の中野邸美術館(中野邸)、新発田市の清水園、菊水酒造(高沢邸)など数多くあります。
(学芸員・喜嶋)
2012年2月25日
新潟市・奈良県 歴史文化交流協定が締結されました
去る2012年2月17日、新潟市と奈良県は、歴史・文化に関する相互支援、協力を推進するため交流協定を締結しました。今回の交流協定は、奈良をこよなく愛し、多くの短歌、書、美術史研究を遺した會津八一が縁で結ばれ、調印式に当記念館の神林恒道館長も出席しました。
これまで新潟市會津八一記念館では、開館以来、八一が愛した奈良とのご縁を大切にし、交流を深めてまいりました。2010年には、平城遷都1300年に合わせて展覧会「奈良の古寺と仏像 會津八一のうたにのせて」が、新潟・東京・奈良の3会場で開催され、多くの入館者を呼び、無事閉幕することができました。
当記念館では、この交流協定をきっかけに、さらに會津八一とその学芸の顕彰、普及活動に努めてまいりたいと考えております。その第一弾として、4月1日から締結記念の企画展「入江泰吉没後20年 會津八一と入江泰吉」を準備しております。一方奈良県では、奈良県立図書情報館で「(仮)會津八一の足跡をたどって」を、5月15日~27日まで開催する予定です。展覧会の詳細は、後日改めて広報いたしますが、どうぞご期待下さい。
開催中の「収蔵品展、同時開催第5回秋艸道人賞写真コンテスト入賞入選作品展」は3月25日までとなります。新潟市内は不安定な天候が続いておりますが、現在は地面の雪もほぼ解けています。お足下にお気を付けてご来館ください。
(学芸員・湯浅)