2012年5月18日
東大寺大仏さまの威容
当館の2階展示室をご覧になった方は、正面の展示ケースをみて一体なんだ、これは!?と思われた方もいらっしゃると思います。2階展示場に上ると手の平をドーンと大きく前に向けていて、すぐ目を引きます。実はこれ、大仏さまの“手”なのです。(画像)
現在開催中の「會津八一と入江泰吉」展では、東大寺から特別に、大仏さまの手の拓本を借りて展示しています。大きさはなんと全長3・6メートル。大仏が国宝に指定された昭和33年以前に採拓されました。曲がっている指に合わせて採拓し、紙をつなげて、一枚に仕上げたとそうです。ちなみに大仏さまの像高(座高)は14.98mです。本日は、地元の高校生が大勢見学していましたが、大半の生徒さんが拓本を見てその威容に驚き、一緒になって手を開いていました。手だけ見ても、大仏さまがどれだけ大きいものなのか、実感出来ますね。さて、この手は右手でしょうか?それとも左手でしょうか?関心を持たれた方は当館で是非確認してみて下さい。
拓本の隣には會津八一が大仏を詠んだ
おほらかに もろてのゆびを ひらかせて
おほきほとけは あまたらしたり
(大らかに もろ手の指を 開かせて
大きほとけは 天足(あまた)らしたり)
の歌の書作品も展示されています。大仏さまの手と同様、書も大変大きいです。これは東大寺境内に建立された歌碑の原本と同類の書です。八一は生前、原本を直接碑に貼って直彫りさせたので、展示されている作品が唯一原本に近いものなのです。
今回は、さらに大仏さまの髪の毛「螺髪(らほつ)」も2点紹介しています。巻貝のような形をしたものが、頭部に966個あるのです。ギリシア美術の影響が濃いガンダーラの仏像は髪の毛が波状に表現されることが多かったのですが、マトゥラーの仏像は髪の毛が渦巻状に表現されるようになり、これが中国、朝鮮、日本へと伝わった仏像表現に大きな影響を与えたといわれています。めったに間近で見る機会がないだけに、ぜひお見逃しのないようご覧下さい。
(学芸員・喜嶋)

2012年5月11日
モノクロームにみる魅力
現在開催中の「會津八一と入江泰吉」展も、折り返し地点を迎えようとしています。今日ご紹介するのは、14日まで展示する入江のモノクローム写真についてです。
入江の写真といえば、あの色鮮やかなカラー写真をイメージされる人が多いかと思いますが、モノクローム写真も味わい深いものがあります。朝霧のなかに浮かぶ幽玄な東大寺大仏殿を撮った「古都遠望」、空が明るく澄んで見え、恐らく夕陽が美しく映えていたであろう「平城京跡」、ススキと五重塔の見事な組み合わせで、郷愁を覚える「法隆寺遠望」など。いずれも対象物がどんな色なのか、見る者に想像を掻き立てる写真ばかりです。
入江は、「モノクローム写真を撮る際は色のある現実世界を一旦、自分の眼のなかでモノクロに置き換えたうえで、いわば心的作用に基づいてトーンを整え、画面構成を図る」と述べています。
今回は、大和路の寺院の建造物や風景のほかに、仏像写真も展示しています。特に注目してほしいのは、それぞれの仏像の材質感と印象の違いです。「興福寺阿修羅像」は脱乾漆像なので、顔の表面に漆を塗って麻布を貼り重ねたあとが見られます。しかも、像の眼差しが澄んで深みがあります。一木造りの「法華寺十一面観音像」は、木目がはっきりと見えますし、光明皇后をモデルに造られたものと伝えられるだけに、なんとなく人間的な親しさを覚えます。「東大寺広目天像」(画像)は、粘土で出来ているので、重量感と立体感が感じられます。よく見ると、まゆをよせた會津八一の表情を彷彿とさせますね。
入江は、穏やかな顔の仏様には柔らかなライティング、厳しい仏像にはスポットライトを当ててコントラストを強め、より一層厳しい表情を引き出して作品を仕上げたのでした。モノクロームに見る「陰影の美」をご堪能ください。
15日から入江泰吉写真がカラ―編へと変わります。モノクローム編でご覧になられた方は、入館券を提示すると無料でご覧出来ますので、どうぞご来館下さい。
(学芸員・喜嶋)
2012年5月 5日
自然の美
風薫る5月となりました。周りの景色が美しく映え、心が和みますね。
現在開催中の會津八一と入江泰吉展も、奈良・大和路の風光の美を写し出した写真を展示しています。たとえば、満開の八重桜を手前に、バックにはほんのりと浮ぶ東大寺大仏殿を写した「陽春大仏殿」や、澄み切った秋の青空を背景に、天女たちが舞っている「薬師寺東塔水煙」など、対象と自然とが一つの風景として渾然と溶け込んでいます。中でも印象的なのは、「二上山晩照」(画像)です。当麻寺近くにある二上山は、古代から神の山として崇拝されていました。その二上山の雄岳の頂上には、飛鳥時代、王位継承問題で死罪を受けた悲劇の皇子、大津皇子が葬られているのです。入江は、その怨念こもる二上山を表そうと、十数回足を運んだのち、暗雲立ち込める夕焼けの二上山をシャッターチャンスとして捉えたのでした。
大和路の美について、入江は次のように述べています。「大和路は仏教を中心にした、それらの文化遺産の数々が千年の風雪にいぶされ、美しく豊かな自然のうちに溶け込む風物一体をなしている。その景観の陰に古代史が、更にはその時代に生きた人々の息吹が宿されていて、この地ならではの美しくもしみじみと心に沁み入る情緒がかもされている」。
こうした、大和路の自然の美を映し出すきっかけとなったのは、実は會津八一との出会いからでした。八一は「歌を詠むので書を書かなければならない。書は木や草に文字の根源があるので、自然を手本として求めた」と。入江は、大和路の自然をよく観察することの重要性を八一の話から学んだそうです。会場には、入江が八一から贈られた書『道法自然』も展示しています。入江の座右の銘となった八一の墨跡とともに、詩情あふれる入江写真をぜひご堪能ください。
(学芸員・喜嶋)

2012年4月30日
講演会のお知らせ
ゴールデンウィーク真っ只中。いかがお過ごしでしょうか。
4月14日は、奈良県立図書情報館館長で、国際日本文化研究センター名誉教授の千田稔先生をお招きして文芸講演会を開催しました。「古代の風景へ 會津八一が憧れた奈良」と題して、會津八一の奈良歌や、法隆寺再建非再建論争から邪馬台国論争まで、幅広い内容で奈良の歴史と魅力をお話しいただきました。聴講者がホールに満杯になるほどの大盛況、ご参加いただきありがとうございました。
さて、今回の企画展「會津八一と入江泰吉」は、もう一つ講演会を予定しています。入江泰吉が生涯に撮影したフィルム約7万点を所蔵し、今年開館20周年を迎えた入江泰吉記念奈良市写真美術館の学芸員、説田晃大先生をお招きして、入江泰吉と奈良大和路の魅力をたっぷりとお話ししていただきます。応募方法は往復はがきで記念館まで、たくさんのご応募お待ちしております。
講師 入江泰吉記念奈良市写真美術館学芸員
説田晃大先生
演題 「入江泰吉が写した奈良大和路 その魅力に迫る」
会場 クロスパルにいがた 4F映像ホール
日時 5月25日(金)
時間 午後6時から午後7時半(予定)
入場料 無料
申し込み締め切り 5月18日(金)
※申し込みは往復はがきで記念館まで
2012年4月18日
桜咲く
ようやく、新潟も陽春の麗らかな日和、暖かな風も吹き始めてきました。当記念館のソメイヨシノはいよいよ本番、満開に咲き誇っています。新潟市で一番早く咲くソメイヨシノと自称していますが、一足先にお花見気分です。ソメイヨシノの下には梅、脇には桃、記念館の面したツバキ通りは椿など、百花繚乱、まさに散策に格好の場所です。
ところで、記念館展示室も屋外に負けない桜が展示されています。現在開催中の企画展「會津八一と入江泰吉」では、入江泰吉が撮影した東大寺大仏殿を背景に桜が写る「陽春大仏殿」をご紹介しています。この写真は、入江の最晩年の撮影といわれる一枚ですが、奈良とその自然を愛した入江らしい集大成の作品といえます。
他にも、入江撮影の白黒写真「吉野山上の千本より」や、長井亮之が描いた桜の絵にあわせて會津八一が短歌「はるきぬと いまかもろびと ゆきかへり ほとけのにはに はなさくらしも」と書き入れた軸作品も展示中です。
記念館は今、桜満開。ぜひご来館ください。
